思い出すのはいつも夏で

 『aftersun/アフターサン』を観た。

 記憶の断片(ビデオテープ)とソフィの想像で語られる物語は詩的だった。

 観る前から父と娘の最後の夏休みの話であろうことは分かっていたけど、最後のカルムの表情でそれが決定的になってしまったようで、切なさと寂しさで胸がいっぱいになった。あの時のあなたの気持ちはわからなかったけど、もし少しでも知ることができていたら…。人生とはそういうことの繰り返しだなとつくづく思う。

 夏は嫌いだけど、思い出の中で一番甘く心地よいのは夏、ことに夏休みだ。脳裏に鮮明に焼き付いている出来事が起こったのが夏休みだった、というのもあるけど、様々な映画で観た夏休みのワンシーンが自分の記憶として存在しているからなんだと思う。何もしないでただ寝そべっていたプールサイド、大人になりたくて背伸びした昼下がり、大切な人の温もりを感じながら眺めた海。アフターサンも、きっと甘く、けれど思い出すと切ない夏休みの記憶の一部になるでしょう。