6月7日 横浜駅の有隣堂

 横浜駅を経由して帰ることになったので有隣堂に寄った。

 入ったところにある村上春樹の作品を集めた棚を眺めていると、レイモンド・カーヴァーの作品集がいくつもあるではないですか!(村上春樹が訳してるから)どれも気になる…。村上春樹はあんまり好きじゃないけど、以前読んだ村上春樹訳のレイモンド・カーヴァーの作品はとても良くてずっと気になっていたので、身近な書店に彼の作品が置いてあるのは嬉しい。でもそうこうしているうちになくなってしまうんだろうなあ。欲しいと思った時に買うべきなんだろうけど、今はだめです。なぜなら図書館で借りた本が3冊もあるから…。うう。

 横浜駅有隣堂で好きなのは、ハヤカワ文庫から岩波文庫にかけての棚です。高校生の頃からよくこの辺をうろついている。うろついているわりには岩波文庫の本とか全然買ったことないけど。でもなんかあの黄色に赤や緑のラインが入った背表紙を見て回るのが好きなんです。知らない本がたくさん並んでいるのを見ると、冒険しているような気分になる。この世にはまだまだ読んだことがない本がたくさんあり、知らない世界が無限に広がっていると思うと、わくわくせずにはいられない。

 高校生の頃の自分も同じことを感じていたので、本棚を眺めているとその頃の自分に遭遇する。けれどあの時感じていたことを今もそのまま感じることができるわけではない。そのことを、過去の自分は許してくれないと思う。心と体の中にあるナイーブな部分が削り取られ、自分を形作るものを愛せなくなってしまうのではないかと恐れていた私は、社会に適応できるように変わってゆくこと禁じていた。でも私は、社会に適応できるように変わってしまった。失敗をしてもあまり落ち込まなくなった。職場ではどんな人にも感じの良い話し方ができるし、常に笑顔でいられる。そんな私を過去の私が本棚の影からものすごい形相で睨んできているような気がする。

 ごめんね、と思う。なんとか社会に適応できてしまった私は、毎日会社と家を往復する日々を送っていて、それはあなたにとっては退屈なものでしかないだろうから。だけど愛することは忘れていないよ、と伝えたい。私を形作るものを愛することは忘れてはいないよ。むしろ自信を持って好きだと言えるようになったぐらい。

 高校生の頃は読んだことのなかったハヤカワ文庫の本を読むようになりました。アゴタ・クリストフカズオ・イシグロが好きです。今は華氏451度を読みたいと思っている。だけどこれも図書館で借りた本があることを思い出し諦めたのでした。