10月29日 眠りの少し手前
久々に夜を無意味に消費している。大きな寂しさに絡め取られている。充足していても、常に少しばかりの寂しさがつきまとう。鬱陶しいけれど、寂しくなければ本なんか読まないだろうし映画も演劇も観ないだろうから、自分が常に少しばかり寂しい人間で良かったと思う。寂しいから世界を穴が開くほど見つめるし、色んな人を愛することができるんだよ。
10月13日 渋谷、南青山、六本木
渋谷で光るポメラニアンを見た。
飼い主の膝の上でお行儀良く座っていたポメラニアンの首は、ぽわぽわと緑色に光っていた。おそらく首輪なのだろうが、ポメラニアン自らが発光しているかのようだった。
六本木から南青山近辺まで歩いた。
金曜夜の東京の道路はタクシーがひしめき合っている。これは今日得た発見。気づけば青山墓地中央にいた。数多の霊が眠る場所の中心地点にいる。なんだかすごいことのような気がして、ふふ、という気持ちになる。
昼ごはんを食べてから昼寝をしなかったせいか、午後はずっと脳の半分が眠りこけている感じがした。全ての行為に実感がない。とてもふにゃっとしていて不確か。早く眠りについて本物の夢の中に降り立ちたい。
9月29日 代々木から渋谷へ
明日は仕事だと思って友人との約束をキャンセルしたのに、出勤しなくていいよと言われてめちゃめちゃ腹立ってます。なんかこういうことが多すぎる。なんなんだ。ということで、怒りをエネルギーに代々木から渋谷まで歩きました。ようやく歩いても大丈夫な季節になってきた。途中寄り道したりしたので、大体1時間ぐらいかかった。アレキサンドロスを聴きながら歩いたのだけど、彼らの楽曲はあの辺りの喧騒、煌びやかな雰囲気によく合う。洗練されていて強気で、でもたまに弱いところを見せてくる。そういえば川上洋平と礒部寛之は青学の出身だったな。
今日は中秋の名月らしいですが、お月様は一向に顔を見せてくれません。あるのはただ、煌々と光る看板の数々です。
8月26日 西荻窪/横浜
西荻窪を散歩して、Titleでたんまり本を買った。本の重みが嬉しい。短歌は面白い。
中高時代の恩師と部活の仲間たちとご飯に行った。来月また会おうと言って別れた。話ができる人の存在に、救われている。来月また会えるということにも救われている。
7月27日 東京ミッドタウン
東京ミッドタウンとは夏に縁がある。
開業した年に、母と妹、祖母と親戚の女性と行った記憶がある。あれは確か夏のことだったと思う。おろし立ての黒のワンピースを着て、六本木という初めての街に思い切りはしゃいでいた。目の前にぐんと迫るビル群を前に怯みながらも、体にははち切れんばかりの興奮が満ち満ちていた。
六本木をひとしきり巡った後、せっかくならできたばかりのミッドタウンで昼ごはんを食べようということになった。けれどいざ行ってみると高い店ばかりで、とても入れそうにない。しばらく館内を見て回っていたら、ちょうど良さげなパスタの店があったのでそこで食事をすることになった。残念なことにその店の料理は全然美味しくなかったのだけど。
それから十数年後、去年の夏、もう一度足を運ぶことになった。
国立新美術館での展示を見てから、炎天下をあてもなく歩いていた。すると一緒にいた友人が、「ミッドタウンにビルボードあるの知ってる?」と気になる話を持ちかけてきたので、そのままミッドタウンに行くことにした。
ビルボードの中には入れなかったので、入り口付近をぐるぐる歩き回った。秋にここでやる誰某のライブに行くと友人は言っていた。全然知らないミュージシャン。私が知らないジャンルの音楽をよく知っていた。逆に、私は友人が知らない音楽をよく知っていた。お互いが知らないことを補い合うのは面白かった。
することもないので、エレベーターでするする下の階へと降りていく。途中、大きくて美味しそうなケーキが並んだ店があり、そこでお茶をしようとした。しかし店内にいる人がみなお洒落なことに怯み、諦めた。「お呼びでないな」とぶつぶつ言いながら、また下の階へとするする降りていく。その間も色々話していたけど、どんな話をしたのだったか。本当にたわいもないことだったのだろう。何しろ今、一つも思い出せないから。
それから約1年後、今日またミッドタウンにいた。ふと思いつきで行ったので、ノーメイクのボサっとした出たちであいまみえることとなってしまった。なんだ、こんなことならもっとしゃんとしておけばよかった。
館外のちょっとした広場にあるギャラリーで展示を見てから、ベンチでしばしぼーっとしていた。風がさわさわ木を揺らしている。昼間の暑さが嘘のように涼しい。目の前で子供が、「このセミお気に入りなの!ミンミンゼミ」ともう1人の子供に熱弁を振るっている。しかしその"セミ"の一言が私を一気に現実へと引き戻した。静寂は破られ、ワンワン響くセミの鳴き声が耳に入ってきた。頭が痛い。私はヒグラシが好き。
せっかくだし一駅分ぐらい歩こうかなと思ったけど、広場を抜けた途端、暑さがぬうっと迫ってきたので諦めた。遠くでセミの鳴き声が聞こえる。
7月23日 砂漠、桃、左手にパスポート
EGO-WRAPPIN'の異邦人と、ジョニー・グリーンウッド&ドゥドゥ・タッサのJan al-Galb Salikを流しながら身支度をする。目の前に砂漠が広がり、体が太陽に焼かれていく。Aesopのマラケシュを身に纏う。
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桃が丸々使われているパフェを食べる。桃は甘い部分もあれば、そうでない部分もある気まぐれな果物。丸々とした桃の下には、皮がついたままの桃が配置されている。ざらりとした皮の内側にじゅわりと果肉が広がっている桃は、官能的な果物。
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夢の中でずっと短歌を考えていた。浮かんでは消えていく言葉を口の中でぶつぶつ唱えては、ため息をつく。ふと視線を左下に向けると、手の中に現代短歌パスポートがある。パスポートを持っていても、旅の仕方がわからないのではしょうがない。今はただ、まじまじと見つめることしかできない。
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あつい。あつい。